意地悪LOVER


「ひかり!マジでいいから、帰れ?」

俺の部屋に入って、スーパーの袋をゴソゴソとするひかりの腕を掴んでそう言う。
だけど、ひかりは俺の言葉に耳を貸さずに何かを探してる。

「ひかり!聞けよっ…!」

おかしい、今日のひかりはどこか変だよ。

てっきりお前は今日俺のいない天国のような部活で、また大地と仲良くしてる。

そう思ってたのに。
なのに、何で俺の目の前にいるんだよ…!!!


「ひか…「帰らないよっ…!」」

やっと顔を上げて俺の言葉を遮ってそうひかりは叫ぶ。


「…何で…」

「…玲皇君、強がりすぎだよ。どうしてなの?何でしんどいくらいあたしに教えてくれなかったの?」

「…たいしたことねーもん」

「でも、どうせ薬も何も飲んでないんでしょ?」

「…」

返すことが出来ない。
そんな俺にひかりは"やっぱり…"と呟く。


「病人をほって帰れないよ」

「…だけど、ひかりに俺を介抱する義務なんかねーよ」

「…彼女じゃんか」

「ひかり…、でもそれは…」

「…違うの?あたしと玲皇君は付き合ってないんだ?」



付き合ってても付き合ってないような恋人だろ、俺達は。

ひかりが今の俺みたいに熱が出たときに、俺は介抱してやらないかもしれないんだぜ?
それをお前は分かってるくせに、俺のもとへ来るのかよ。


「…肩書きなんだ、付き合ってるなんて言わねーじゃん」

「…」


今度はひかりがグッと押し黙る。

…帰るのか?


なんて思い、返事を待っていると


「…分かってるよ。…とりあえずお粥作ったら、帰るから…。玲皇君は薬を飲んで寝ててよ…!」



ひかりは俺の瞳を一回も見ずにそう零した。



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