意地悪LOVER
嵐が去ったように静けさを取り戻す俺の部屋。
キッチンにはいるはずのない人がいる。
「…玲皇君、冷蔵庫空も同然じゃん…」
ため息混じりに聞こえてくるひかりの声。
俺は雑誌を読んで気を紛らわす。
変だな、緊張してる。
この静かな部屋に俺の心臓の鼓動が響きそうで怖いんだ。
「…無視もいいけど」
ちょっと怒ったような口調でご飯を作り始めるひかり。
…変なひかり。俺にこんなに話しかけることなんて滅多にないのに。
ましてや、返事が返ってこないことに怒ることなんてなかった。
「…玲皇君だって…強がりじゃんか」
「…?」
不意に震える声が後ろから聞こえてきた。
一体なんだ、今日は。
「別に隠してないし、気付かなかっただけだろ」
わざとそっけなく返す。いや、こっちの方が良いんだ。だってひかり相手にどうして気を遣わなきゃだめなんだよ。
「でも、しんどいくらい言ってくれても…」
「何で?どうしてひかりにしんどいなんて言わなきゃダメなの?」
「…マネージャーは部員の体調管理もしなきゃだめなのっ…!」
なんだ、やっぱりそういうことなんじゃん。
分かってたことなのに、何で俺ショック受けてんの?
「結局ひかりだってそう思ってんでしょ?」
「…玲皇君…?」
今は熱のせいで、言葉がとまらないんだ。
いや、熱のせいなのかな。ほんとはこれが本音じゃないのかな。
でも、一言一言言葉にするだけでチクンと胸に何かが刺さるのは何でなんだろう?
「ひかりだってマネージャーだからこうしてここまで来たんでしょ?彼氏と彼女だからじゃないじゃん」
「違うっ…!」
「何が違うんだよ?」
俺は今までひかりに向けていた背中を半回転させて振り返る。
するとそこには涙を瞳いっぱいに浮かべたひかりが。