意地悪LOVER



「…何で泣くのっ…?」


もう頼むから。
俺に構うなって。そうやって俺にいちいち突っかかるからひかりが傷つくんだろ?

俺は俺で自分のことを解決するんだから…、ひかりが入ってこれる隙間なんてないんだよ。


「…分かんないっ…!全部が分かんないのっ…!」


顔をゴシゴシ擦って一生懸命涙をとめようと必死なひかり。


「おい、あんま擦んなっ!」

その腕をとめようと掴むと、ひかりは俺をキッと睨みつける。


「助けてくれた玲皇君は嘘だったの…?」

「…助けた…?」

「女の子達の中から…助けてくれたじゃんっ…!」

「…」


あれは…。
俺だって何であんな真面目に助けたんだろうって思ったよ。

でも頭がボーっとして何を考えてるのかもわからなくて。

気がついたらそこにいたんだ。



「…たまたまだよっ…」

「でも、…なら何で…」

「わっかんねぇよ!俺だって気付いたらあそこにいたんだ!助けたいなんて思ってねぇよっ…!!」

「…」



突然叫んだ俺の言葉に驚きを隠せないひかり。
いいんだよ、これで。分かったろ、俺が情も何も持たないただの冷たい人間だって。

俺は嫌いなんだよ。誰かを信頼して、誰かに好意を持つことが。



「…っ…」


また涙を零して泣きはじめるひかり。

ほら、また俺を深追いするからそうやって自分が傷つくんだ。

それならもういっそのこと手放してやったほうがいいのだろうか。
いや、そもそもこんな女を構ってたのがいけなかったんだ。


だけど、ひかりは帰ろうとしない。
むしろまたキッチンに戻ってお粥を作ってる。

涙を零しながら。



俺はこのイライラをどうすることも出来ず、再びベッドへと座り込んだ。


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