パラサイト ラブ
中に居たのは小さな体つきの老婦人。
俺が先入観で持っていたホームレスのイメージとはかけ離れた、清潔な顔をしていた。
老婦人は俺の顔を値踏みするように眺めて、首を傾げた。
「あんた誰だ?」
「あの…今朝さらわれたという女性のことで聞きたいことが」
「もしかして……あの子の、婚約者か?」
何で俺が婚約者だとわかったのだろう。それが不思議だったが、朝乃の情報を得るのが先だ。
俺が頷くと、老婦人は俺を家の中に入るよう促した。
「――――あの子とは、一昨日公園のベンチで会ったんだ」
カセットコンロで沸かしたお湯を欠けたマグカップに入れ、俺に差し出しながら老婦人は話し出した。
「夕方、水道に水を汲みに行ったらさ、ベンチでぼんやり座るあの子がいて……
それだけならなんとも思わなかったんだけど、手に求人雑誌を握りしめててね、ずっと見ていたら涙を流し始めたものだから、なんだか放っておけなくて声をかけたのさ」
老婦人が話す朝乃の姿がはっきりと想像できて、俺は胸が苦しくなった。
仕事を探して、でもうまくいかなくて……途方に暮れる、朝乃の姿が。