パラサイト ラブ

「―――――朝乃!!」



交番の中に入る前に、彼は私の姿に気付いて建物の中から出てきた。


面倒な警官だという第一印象とは打って変わって、立派なお巡りさんとして私の目に映った。



「お仕事中にごめんなさい、この上着、返そうと思って」



私がコートを差し出しながら言うと、太一さんは首を傾げた。


「仕事、もう見つかったのか?」


「私、帰ることにしたんです……自分の本当の気持ちに、気づいたから」


「帰るって……お前を縛るような奴のところへか?」



心配そうに私の顔を覗き込む太一さん。私は微笑みながら頷き、そしてこう言った。



「縛っていたのはお互い様なんです。だけどきっともう……縛らなくても大丈夫だと思うから」



お世話になりました、私はそう言ってコートを返した。



「なんか……別人、みたいだな。悔しいけど、今の朝乃すごく綺麗だ」


「…なんですか急に?」



よく意味が解らなくて首を傾げると、太一さんは『気にするな』と言って私を笑顔で送り出した。



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