しあわせおばけ

カリカリと鉛筆を走らせる音がするそばで、俺と妻は頬杖をついて明日香の真剣な横顔を見守った。

まつげが長いのは、妻ゆずり。

ちょっと鼻が大きいのは、俺に似てる。

確実に俺たちの一部分を受け継いだこの娘は、これからどう育っていくのだろう。

こうして母親が天使となって現れたことを、今どう思っているのかは正直わからない。

アニメの世界にいるような気持ちなのか、それとも案外きちんと理解しているのか。

どちらにしても、将来、俺が年をとってこの世を去り、両親を失ったときに、今日のことをどういうふうに思い出すのか、興味深かった。



「できた!」

原稿用紙に顔がくっつくんじゃないかと思うくらいに夢中になって書いていた作文は、あっという間に完成した。

「お、じゃあ、発表会か!」

「うん!」

明日香はすくっと立ち上がって、原稿用紙を持った手をまっすぐ伸ばした。

「夏休みの思い出。三国明日香」




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