愛してるなんて言わないで



音楽プレーヤーの音量を最大にあげて、外の音を遮断した。

何も聞きたくない。

今だけ、透明人間になれればいいのに。


終点に近づくにつれてまばらになる人。

四人席に陣取っていたから、当然前に人がいるわけで。


その人がちらちらとあたしを見てきていた。


なんだろう?


目が合うと、何かを喋っていたから慌ててイヤホンを外して問いかけた。



「はい?」




「よかったら、どうぞ。」


そういって差し出されたアルフォート。


全く知らない男の人。


「いや…いいですよ。」


悪いですし…と断る。

頼むから、話しかけないでよ。



「甘いもの食べて落ち着いてください。」


微笑んで、また差し出された。


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