愛してるなんて言わないで



「あ、じゃあ…いただきます。」


差し出されたアルフォートを食べて、また涙が溢れてきた。


どうしてなの…こんなあたしにも優しくしてくれる人がいるんだ。


それだけで、失恋中のあたしの心は暖かくなった。



「大丈夫…ですか?」


心配そうに聞いてくる。

知り合いでも、なんでもないのに。


「すいません…泣いてて。」


「気にしないでください。元気でました?」


「あ、はい。ありがとうございます。」


見返りも求めずにやさしくできるんだ。


あたしもこの人みたいに優しくなろう。


洸くんを嫌いだと思っていたけれど、
あたしは洸くんが好きだった。


うざったいとかいいながら、洸くんの隣でいるのが当たり前だった。


手放してから、大切なものの価値がわかる。



あたしは身をもって経験した。



< 124 / 138 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop