あの場面はどこに
「お前みたいな女と別れてよかったよ。今の彼氏だって、そのうち逃げ出すさ」

「アンタみたいな男と違うの」

「馬鹿同士だな」

「彼のこと知りもしないくせに、悪口言わないでよ!とにかく、私は嫌がらせなんかしてないわ。いい。私の彼は馬鹿じゃないわよ。このワンピースだって、彼のために買ったんだから」

「似合わないもの着るな」

 まさゆきが鼻で笑う。

「彼氏だってげんなりだぜ、きっと」

「……ゲ……」

「なんだって?」

「まさゆきも印象が変わったみたい。頭、ハゲたんじゃない」

「なにぃ?」

「おでこがキテルわよ!このうすらハゲ!」

 私はテーブルに置かれているコップを掴んだ。まさゆきにコップの水をかけてやるつもりだった。

 コップを持ち、立ち上がったはいいが、同時にめまいを感じた。目と頭がクラクラする。
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