午前0時、夜空の下で
そう、心配そうに呟いた兵士を見て、男は安心させるように笑いかける。

「あの方なら、きっとお元気に笑っていらっしゃるだろう」

そうですねとはにかむ兵士の肩を叩いて、男は静かに立ち去った。

しんと静まり返った真夜中。

光り輝く満月だけが、そのすべてを見守っていた。



「心の様子はどうだ?まだ泣いていたか?」

月の光を背に、妃月はうっすらと微笑した。

「それはもうズルズルと。帰りたいだの何だのとぼやいた挙げ句陛下の真名をも口にしましたよあの小娘」

そんな返事にクツクツと笑う。

「随分と心を嫌っているんだな、キシナ?」

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