午前0時、夜空の下で
しかし、ミスティアは余所を向いたまま、目を向けようとはしない。



あの日。

カルヴァローネ伯爵と美女の姿を見てから、何度月が昇り、沈んだだろう。

両手の指では足りないほどの長い期間、彼は店に現れなかった。

五日に一度は顔を見せていたにもかかわらず、だ。

想いを伝えようと意気込んでいたミスティアは、なかなか訪れない伯爵に落ち込み、やがてそれは――怒りに変わった。

その一部始終を見てきた心たちは、ミスティアの気持ちがわかるからこそ、問い掛けてくる伯爵の視線に応じる訳にはいかない。

「ミスティア?」

戸惑いの声が、何度も繰り返される。

始めは黙っていたアシャンだったが、とうとう立ち上がった。

「カルヴァローネ伯爵、少々失礼致します」

優美な動作でミスティアを促し、休憩場へと入る。

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