午前0時、夜空の下で
「誉れの雫と名高いノースヴァン家も、その程度か。琅の国情は知っているだろう。あれはどうやら、ウィーザーに捕まったらしい」

そんな、と口唇を震わせるシリアから、妃月はつまらなそうに視線を逸らす。

「私には、未来を視る力などない。媒体を通して、心の現状を知ることはできるが。心が琅に行くなど、予想できるはずないだろう。私にわかるのはすべての終わりだけ……いや、これも私の願望だな。こうなってほしい、という」

誰に話すわけでもなく、独り言のように呟く妃月。

シリアの存在など、とうに視界に入っていないのだろう。

口を閉ざしてしまった魔王に、彼女はもう何も言えなかった。







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