午前0時、夜空の下で

「――どこでそれを耳にした」

冴え冴えとした視線が心を貫く。

漆黒の衣装を纏った魔王は悠然と立ち上がり、ゆっくりと歩き始めた。

冷然とした態度に、心は恐怖を覚えて後退さる。

「……妃月さま? 私が、わからないの?」

ひっそりと漏らされた囁きは、妃月の耳にも届いたのだろう。

口元に薄らと笑みを浮かべ、瞳には紛うことなき怒りを露わにしたまま、王は腰に佩いていた漆黒の剣を抜いた。

一陣の風と共に寸分の狂いなく心の喉元へ宛がうと、秀麗な目を細めた。

そして声もなくもたらされたのは、たった一言――……


“    ”


それが心を絶望の淵に追い遣った。

「……あ、あ、ああああああ―――――!!!!!」

狂ったように泣き叫ぶ心に煩わしげな視線を向けると、魔王は躊躇いなく剣で掻き切ろうとする。
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