午前0時、夜空の下で

「心様!!」

一瞬の間もなく振り落とされた剣を、急遽現れたキシナがぎりぎりのところでかわした。

眉を上げた魔王が剣を引くと、キシナは心を抱き上げ姿を消した。

ジェイも危険を悟り、クウェンを担ぎ上げると瞬時にその場から消え去る。

黎の者だけが残された大広間は、恐ろしいほどの沈黙に支配された。

王が剣を鞘に戻す動作に、周囲がようやく動き出す。

「陛下、先ほどの者たちはいかがなさいますか」

「琅への対応はどうしましょう」

 口々に言葉を発し始めた官吏たちを、妃月は視線を向けて黙らせた。

「キシナが絡んでいるなら、琅へはまだ何もしなくともよい」

クロスリードとアルジェンも、王の命令に従うため歩み寄る。

彼らを目にした妃月は変わらぬ冷徹な瞳で口を開いた。

「――あの女は殺せ」

その一言に、大広間に集まった者たちは一斉に頭を下げて了承の意を示した。






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