午前0時、夜空の下で
「今回の事態は、我らにとっても信じられないのだ。クウェン殿、一時期……黎王が少女を囲っていたという噂を耳にしなかったか?」

話を始めたキシナに、クウェンも混乱した様子を見せつつ聴く態勢をとった。

ジェイは窓際で外を見張りながら、静かに耳を傾ける。

「……そう、言えば……黎王が魔界にお戻りになってすぐ、そのような噂がありました。あまりに短い期間でしたし、琅では姿を目にした者がいなかったため、信じる者もそれほどおりませんでしたが……」

そこまで口にしてようやく思い至ったのだろう。

まさか、と言いたげな表情でクウェンは心が寝ている部屋に視線を向けた。
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