午前0時、夜空の下で
「彼女は黎王によって城に招かれ、どの令嬢よりも正妃に近い待遇を受けていた。
黒牙軍所属の私が彼女の傍に控えているのも、王の勅命を受けたからにほかならない。
……だからこそ、此度は琅を利用してでも彼女を城に連れ帰ろうとしたのだ。
そして琅にとっても、これは悪い話ではなかったはずだった」

溜息とともに語られたことに、クウェンは注意深くキシナを観察したが、そこに嘘をついている様子は見受けられなかった。

「私もそう思ったからこそ、兄上に進言したのだ。
黒牙軍に属した私の主は魔王陛下だが、それでも故郷を想う気持ちはある。
今回の計画は琅の立場をより確固たるものにするだろうと思ったのだ……陛下の態度を目にするまでは」

琅の皇子たるジェイの言葉には、クウェンも頷くしかない。

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