午前0時、夜空の下で
「一体、何をなさるつもりなのですか、クロスリード様。
カザリナ様のことも……あなたが彼女を推したために、ほぼ後宮入りが確定してしまいました。
ココロ様という方がいらっしゃるのに、どうして」

シリアは悔しげに唇を噛みしめた。

――夜会の日、黎王はカザリナ姫と一夜を共にした。そしてココロという女性が城から消えた。

この事実は集まった貴族たちを邪推させ、根も葉もない噂が飛び交った。

だがシリアは、心さえ見つかれば噂などすぐに消えると考えていたのだ。

陛下はかつてさまざまな女性と夜を過ごしていたが、誰も召し上げることはなかったし、心が魔界に来てからは他の女性を寝所に呼ぶこともなくなった。

心だけが破格の待遇だったのだ。
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