午前0時、夜空の下で
大広間では集まった貴族や官吏たちが口々に騒いでいることだろう。

王の真名を口にした女も、王の逆鱗に触れた女も、この世界にはいなかった。

……今までは。

「どうして教えて下さらな……いいえ、箝口令を布きましたね? 琅の姫君がいらっしゃるというのに、城では噂にもなりはしなかった」

他の七国から選ばれし姫が登城した時は、多くの使用人がその姿を目にしようと窓から身を乗り出していたのだ。

それが今回は沈黙を保ち、女官長であるルヴェータですらこのことを把握していなかった。

「琅からいらっしゃるのはココロ様だと、キシナから報告がありましたからね。
宮殿の準備も必要ないでしょうし、すぐにお帰りなっていただく予定でした。
案の定、陛下の逆鱗に触れ逃げ帰られましたが」
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