午前0時、夜空の下で
耳朶に、そっと口唇を近づけて。

ただし、と妃月は囁いた。

「逃げようとは考えるな」

その声の真剣さに、思わず目を見開く。

すべらかな象牙色の手が、心の瞳を覆った。

手の温もりが優しくて、身体の力が抜けていく。

妃月が小さく寝ろと囁いた瞬間、心の意識はすでに深い闇へと落ちていた。









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