午前0時、夜空の下で
赤く色づいた口唇が近づいたかと思うと、ザラリとした感触が喉元を這っていく。

ゾクリと、肌があわ立つ。

「お前、あの厳しいと評判の女官長を味方につけたらしいな」

項を舐めつつ、耳朶の辺りで囁かれた。

擦れた声に体温が高まる。

「っ…知りませんっ……!」

ビクビクと反応する体を甚振るかのように、執拗に舌を這わせてくる。

「……随分と、楽しい一日を過ごしたのだろう?」

満足そうに顔を上げた妃月は、唇に弧を描いて心を見下ろした。

「何か文句でも?」

挑戦的に睨み付けてくる心の瞳に、怯むことなく目を細める。

「ない。……心、お前はそのままでいい。好きなように動け」
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