君がいた夏


次の日、傘を返しに2―Bに行った

「わざわざ、すみません」
「いや。こっちこそありがとう、助かった」
「それなら良かったです」

そう言って笑った菜穂ちゃん

だけど
そのまま俺の方に倒れた

「え?」

瞬間的に肩をつかみ菜穂ちゃんを支えて、菜穂ちゃんの顔をのぞいた

「おいっ」
「・・・すみません、大丈夫です」
「絶対大丈夫じゃねーだろ、とりあえず保健室いくぞ」
「・・・・っ」

あまり意識がハッキリしてないのか菜穂ちゃんは曖昧に答えた

俺は彼女をおぶって保健室まで運んだ

さすがにお姫様だっこは後でこの子に迷惑がかかりそうだ。



「熱ね」

そう保健の先生は言った

「はぁ・・・そうですか」

俺は安心して
菜穂ちゃんが寝るベッドの横の椅子に腰を下ろす

保健の先生は少し考えてから
独り言のように呟いた

「昨日、雨に濡れたのかしらね・・・この子かなり家遠いのに」
「え・・・?」
「歩きで30分以上かかる場所だったはずよ」

家近いって嘘だったのか・・・

「先生ちょっと席はずすから、見といてくれない?」
「はい、いいっすよ」

そう言って先生は出ていき
俺は菜穂ちゃんの顔を見る

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