君がいた夏


「・・・ありがとう、先輩。ちゃんとフってくれて」

先輩は私を見つめる

「これでちゃんと、前に進めるはずだから」
「菜穂ちゃ・・・」
「先輩」

私は先輩の言葉をさえぎる

「中学の時、先輩に出会って、恋をした日々は・・・私にとってとてつもないぐらい幸せな日々だったよ。ありがとう」

そう言い終わったとき
アスファルトに落ちた涙で初めて泣いていることに気づいた

「菜穂ちゃん」
「・・・あー、もう。泣かないってきめてたのに、な」

声が小さくなっていく
涙があとからあとから溢れてくる

「先輩、行って」


私はドアを指さす

「え?」
「・・・お願い。紀衣さんを守りたいなら、行って」

下を向いて呟く

「・・・わかった」

先輩がうなずいて立ち上がった
そして
同時に、温もりが消えた

しばらくしてドアのしまる音がした


それはまるで
私の恋の終わりを告げたように
耳の奥深くまで響いていた


先輩との恋に
初めて

終止符が打たれた

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