君がいた夏

気持ち




「え――?!あの人が菜穂の元カッ・・・ムグッ」
「しーーっ!明美、声大きいよ」

あのあと私は五時間目をサボり
教室に戻ったら明美に捕まった。

そして
いきつけの喫茶店で問いただされ全てを話し、今に至る。


明美の口を押さえながら
私は小声でいう

「ごめん。・・・・で、どうゆうこと?」
「だから、あの先輩が私の中学の元彼で、夏休み前にいなくなった人」
「あの、最低最悪男ね」
「最低最悪って……」

私は苦笑いをしながら
頼んだジュースで喉を潤す

「藤堂優陽、先輩・・・・」

小さく呟いた私の言葉に明美が首をかしげる

「藤堂?確か、あの人松川優陽だよ」

私は明美を見つめる

「え?」

人違い?

そんなわけない。

だって彼は
私を知ってた。

菜穂ちゃんって私を呼んだ

「・・・・どうゆうこと?」
「よくわかんないけど、私、先輩に直接聞いた方がいいと思う」
「え?!」

私はサラリと言う明美を見つめる

「だって確かなことは本人しか知らないし・・・それに」
「?」
「菜穂が前に進むためには絶対必要な事だよ」

明美は私を真っ直ぐ見つめる

「明美・・・」
「菜穂なら大丈夫」
「・・・・・」

そうだ。

いつかは進まなきゃいけない

後ろを向いて
思うだけじゃダメなんだ。

ちゃんと
今を見なくちゃ。

「私、ちゃんと聞くよ。先輩に」

不安をふりきるように
私はうなずいた。
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