君がいた夏

「はー・・・」

先輩は私を見つめるとため息をついた

「ほんと、菜穂ちゃんは変わってないな。変わってないからそんなこと平気で聞けんだよ」

先輩?

先輩から向けられた眼差しはさっきとは全く違う
すごく冷たいものだった

私は動けなくなった。

「その質問に俺が答えなきゃいけない訳は?」
「それはっ・・・」
「それは?・・・・まさか元カノだからって特別とか思ってないよね?」

先輩は目をあわせたまま首をかしげる

「っ」

何も答えられない。

「俺の何を知ってる?・・・・ほんの少しそばにいたからって俺の全てをわかりきったように話すなよ」

涙で先輩の姿が滲んでいく

雫が一粒
私の足元に落ちた。

「っ・・・先輩・・・」

あの日々が
特別だと思ってたのは
私だけだった。

大好きなあの笑顔もすべて
偽物だったの?

私が涙を振るった瞬間
先輩は小さく呟いた

「・・・・菜穂ちゃんは、何も知らなくていい」
「え?」

いま、なんて?

「いや。早く戻れよ、冷えるから」

先輩はそう言うと
屋上を後にした

私は、知らなくていい?
どうゆうこと・・?

わからないことばかりだ。
だけど、ただ1つハッキリしたことは
昔の先輩はもう


いないんだということ。


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