威鶴の瞳
「うお!?この足元の虫、威鶴がやった奴か!」
「あ、悪い、蹴る方向まちがえた」
時々味方の方に落としてしまうのは、戦闘に慣れていない証拠だな。
気を付けないと、トーマは動きが大きいんだからよく動き回る。
「お前少しは味方込みの戦闘の練習したらどうなんだ?」
「そこまでする必要はない。本来ここまで戦闘になることはないからな」
「してくれなきゃ俺が困る……って!だから終わった奴外に出せよ!!」
「悪い」
口論しながらも俺たちは敵を片付ける。
高校生相手程度なら、まだまだ体力には余裕がある。
「それを言うならトーマだって効率悪いだろ。確実に一点狙って気絶させれば済むことを、わざわざ力ずくで暴れて――」
「お前みたいに急所全部覚えてるわけないだろ!?」
「自分の体で押して苦しくなる場所を狙えばいいだろ」
「誰が好き好んで自分を痛みつける必要がある!?」
なんて話しているうちに、あっと言う間に俺たち二人以外は倒れていた。
トーマは慣れているかもしれないが、俺はそんなにこういう状況に慣れていない。
手加減の仕方だって難しいんだ。
「人数が多かったな」
「普段は肉弾戦なんてしないからな。特に威鶴は」
そう言って俺を見るトーマ。
悪かったな、頭脳戦専門で。