威鶴の瞳


駅に呼びつけられたらしいその車が、私たちの前で停車する。

車から出て来たトーマの顔は、青ざめていた。

……なぜ?



「叶香、テメー、依鶴さんに何――」

「誰かさんがいつまでも手出せないのを憐れんで知識詰め込んでやったのよ。ありがたく思えヘタレバカクズ」

「いらねーよそんなん!これからなんとでもしようと思ってたことを……」



ぶつぶつと呟くトーマに、これから何かをしようとしていたのか、と今まではスルーしていたことを察することが出来るようになっていた。

曖昧な言葉とはどうとでも捉えられて恐ろしい……。



「じゃ、後はホテル行くなり帰るなりホテルいくなり好きにしなさいよ」



今ホテル二回言った?



「帰る」

「ツマンナイ男だこと」



つまらなくない、つまらなくないから全然!

これっぽっちも!

ヒドイ会話をする兄妹だ――と思いながらも、私も姉を思い出す。

……そして、こんな形でも『羨ましい』と、そう思った。
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