威鶴の瞳


「会うの、少し怖い」

「『捨てた』から?」

「……違う、いてもいなくても変わらなかったから」



育児放棄、だったんだろうか?

親が考えていることは、いつも全くわからなかった。



大体、もう顔も覚えてない。



「あの家に戻る勇気がないから」



あの場所はきっと、もう、私の居場所じゃないから。



「わかった」



残念そうな顔をするちづちゃんに、『ごめん』と謝って、少し一緒に歩いた。



「これからどうするの?」

「どうも。元の人格になるのを待ってみる」

「終電までに戻らなかったら、帰れないよ?」

「帰ろうとしても家覚えてない。でもきっと、どうにかなるよ」

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