威鶴の瞳


「あなたが長時間眠りについていた理由、主人格の『依鶴』が長時間出て来た理由は、あなたの心の変化、つまり満足感と、分裂のきっかけになった姉と接触した事が原因」

「はい」

「原因ってのも変だけど。それはつまり、今の威鶴も同じ事なんじゃないかしら?威鶴もトーマの安全を確認出来れば戻って来れると思うわ」



威鶴が、戻って来る……?

ますます早くトーマに会いたくなった。

早く威鶴を安心させてあげたい。



でも同時にそれは、別の意味も引き出した。





「でも、威鶴が表に戻って来るということは、今のあなたの存在理由が終わるということよね?」





つまり、今度はまた、私が消える──?



「絶対ってわけじゃないのよ。でも色々と今までの話もして来たし、まだ消えるに達しない不満が出来てるなら眠りにはつかないかもしれない。例えば、姉に会いたいと思うなら、会うまでは大丈夫かもしれない」

「……」

「でも、会いたいんでしょう?」



< 443 / 500 >

この作品をシェア

pagetop