威鶴の瞳


苦しい。

トーマの苦しそうな、悩んでいるようなその表情を見ていると、俺も苦しくなる。

……依鶴の気持ちが、邪魔だ。



「可能性が0じゃない限り、試さない理由は……あっちゃいけない」



少なくとも、このBOMBという機関の仕事の内だと、どんな手段を使っても依頼優先。

『嫌だ』という理由だけで、可能性を消してはいけない。



「ただ、俺の能力は例外で、その人の私生活から過去、未来まで全て見ることが出来てしまう。それはそれでBOMBで禁止されている」

「あぁ」

「どうするべきだと思う?トーマ」



どうしたい?

トーマ。



お前を追い詰めているわけじゃない。

ただ、聞こえによっては、追い詰めているように聞こえるかもしれない。



違うんだ、俺はお前に選択権を与えただけだ。

過去を知っているから、知ってしまったから、少なからず同情の気持ちもある。



ただその気持ちすらも、お前には伝えられないが。

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