教組の花嫁

 この事実に直面する時、百合葉の心はゆれに揺れていた。


 (もう一度だけ試してみようか)


 百合葉の脳裏に、ひとりの女の顔が浮かび上がった。



 星野小波だった。



 「君は和服が似合いそうだね」



 百合葉は道心の言葉を思い出していた。


 道心は和服が似合う女を好む。


 (私がそうだったように)


 百合葉は道心に長年接して、道心の好みを知り尽くしていた。



 (小波なら道心の好みに、合うかもわからない)



 女の勘だ。


 百合葉は最後の賭けに、星野小波のカードを切ろうと思っていた。





 
< 109 / 296 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop