教組の花嫁
 
 「君が9歳と言えば・・・」
 「今から18年前です」

 小波が答えた。


 「教団が設立して20年ちょっとだから、設立して間もない頃か。思い出した。もしかして、君は淀川大橋の近くに住んでいなかったかね」

 「はい、その当時は、そこに住んでいました」

 「やはり、そうか。君のお父さんの事は良く知っているよ。当時、まだ、信者が少なかったが、君のお父さんは私の話を熱心に聞かれていたのを、良く覚えているよ」


 道心は、星野小造の人の良さそうな顔をはっきりと思い出していた。


 「私がわからないのは、復讐するなら、なぜ千葉君の申し出を受けたかと言う事だ」


 「それは、教祖様が私の思っていた人物と余りにも違うので、もっと良く知りたいと思ったからです」


 「どう違うのかね」


 道心が鋭く追及した。




 「私は教祖様が好色で、冷酷で、欲深い方だと、思っていました」




 小波は、道心を知る前に抱いていたイメージを率直に道心に述べた。





< 140 / 296 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop