教組の花嫁
 
 「その通りだろう」

 「いいえ、教祖様は紳士で尊敬に値される立派な宗教家です。だから、教祖様をもっと知りたくなったのです」


 「化けの皮を剥がしに来たという訳か」


 道心が口元に不気味な笑みを浮かべながら言った。



 「まあ、そうです」


 「君のご両親には本当に済まない事をした。心から謝りたい」


 道心は胡坐の位置を変え、正座をして、小波に向かって大きく頭を下げた。

 「・・・」

 「教団の設立当時は資金繰りに困っていた。それで、寄付を無理強いして信者を泣かせて事もあったかもしれない。今、私が寄付を無理強いしないのも、その過ちを二度と繰り返したくないという、反省からだよ」


 道心が稚拙な過去を恥じた。


 (そう言えば、教祖様が言うように、自分は一度も寄付を強請された事はない)


 教団に入信してから今までの過去を振り返り、小波はそう思った。





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