教組の花嫁

 ある時、店の上得意の客がママに何やら耳打ちをした。


 その日は、いつもより皆から酒を多く飲まされた。
 酔いがかなりの勢いで廻ってきた。


 小波はふらふらだった。
 ママが上得意の客に言った。


 「たーさん、悪いけど、この子を送って下さらない。この子ったら、こんなに酔ってしまって、仕方の無い子ね」


 「じゃ、タクシーで送ってやるよ」
 客が上機嫌で答えた。


 タクシーが来た。
 無理やり、私はタクシーの中へ押し込まれた。


 「わたし・・・お・り・ま・す」
 小波がもうろうとする意識の中でもがいていた。


 「何を言ってるんだ。ママにはお金を払って承諾をもらっているんだ。運転手、どこでもいい、ホテルで止めてくれ」



 「お・ろ・し・て・・く・・だ・・さ・・い」


 小波が必死で逃げようとした。
 客は私に口付けしようとしている。





 
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