教組の花嫁

 「百合葉~百合葉~」


 ほのかがマスコミの連中に聞こえるような大きな声を上げた。



 「しっかりしいや~」


 「百合葉~」


 ほのかが、猫背になりながら患者搬送ベッドの横を小走りでついて行く。

 マスコミから顔を見られないように、ほのかは百合葉の顔を見て悲壮な声を上げている。


 「百合葉~」


 「大丈夫か~」


 「もうちょっとの辛抱やで」


 その時、マスコミの中のひとりが走って来て、患者役の百合葉の顔を覗き込んだ。そして、皆に向かって、手を左右に振って、ほのかじゃないというしぐさをした。



< 74 / 296 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop