眠り姫の唇

「何してるんだ。早く来い。」

「や、だって私会員カードとか…」


持ってないんですけど。という言葉は岩城の言葉にかき消される。


「お前はゲスト登録してあるから大丈夫だ。」


スタスタ歩いていく岩城を慌てて追いかけてゲートを通る。


どうやら岩城のいった通りらしい。


警報装置は作動しなかったみたいだ。


周りをちらちら見ながら岩城の広い背中について行く。


煌びやかな見た目から中が想像つかなかったが、どうやらジムみたいな所のようだ。


オーナーの趣味が良く分からない。


インテリアとジムの機械があまりにもミスマッチだ。


瑠香はかたわらに置いてある鹿の生首に怯えながら岩城の腕をキュッと握った。



「あれー?!岩城来てくれたのか?!」


岩城の体の向こうから聞いたことのある声がした。



「…お前、改装したのに前より趣味の方向性がおかしくなってるぞ。」


「やー。外装は業者に任せたんだけど、やっぱり中は俺の空間でもあるし、自分の好きなようにしてみた。」


< 310 / 380 >

この作品をシェア

pagetop