眠り姫の唇


カカカッと笑って久保井は岩城の後ろを覗き見た。


「お、何隠してんのかと思ったら高江ちゃんじゃん。」


「…お久しぶりです。」


今の会話はどういう意味なんだろう。もしかして…。


色々思案しながらも、瑠香はぺこりと頭を下げた。


久保井は手を大きく開いて歓迎の意を表す。


「よーこそ。俺のジムへ。」


「あ、やっぱり。」


どうやら、久保井はジムを経営しているらしい。


「汗かいたら、あっちに風呂もあるし、なんでもいってね。」

頼もしくニカッと笑って久保井は奥に消えていった。



「…すごいですね。これが言ってた立ち上げた会社なんですね。」


ほーっと感心しながら瑠香が呟いた。


岩城はスポーツバッグを降ろしながら平然と言う。


「違う。ここはアイツの趣味で立てたアソビ場だ。久保井の会社は別にある。」


「へ?!」


甲高い声を出しながら瑠香は岩城の背中を見つめた。





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