眠り姫の唇
ふと瑠香は岩城という男はハズレなのかアタリなのか考えた。
「(…微妙)」
リサなら間違いなくアタリくじだというんだろうなと思いながら、瑠香はチラリとオフィスの奥の方の前川を見つめる。
自分より更に多い資料に囲まれながら信じられない早さで作業を行っている彼女を複雑な眼差しで見つめた。
bbbbbbbbbb…
ポケットのバイブがなる。
この時間帯なら誰だかもう想像がつく。
瑠香はため息をつきながら携帯を開いた。
『何時にあがる。』
毎回一文一句違わない文面に瑠香はもう一度ため息をつく。
カチカチ…
『今日は残業です。何時に終わるか分かりません。先帰って下さい。』
bbbbbbbbbb…
『俺も今日は遅い。待ってろ。』
カチカチ…
『何時になるか分からないって言ったじゃないですか。多分岩城さんより遅くなる気がするので遠慮なく帰って下さい。』
それだけ打つと瑠香はふぅと息をつき携帯をポケットにしまった。