気がつけば愛でした



「私、これ片付けたら帰りますから、高柳さんはゆっくり休んでいて下さい」



静奈は空いた食器をキッチンへ運ぶ。

洗い物を始めると、高柳が寄ってきて隣に立った。



「ありがとうな。」

「え?」

「色々ありがとう」



素直にお礼を言う高柳に思わず手が止まる。

見上げると、高柳が優しく見下ろしていて、初めてみるその瞳にドキンと心臓が鳴った。

目を合わせたまま、高柳がシンクに手をかけ、グッと身体を寄せた。
触れそうなくらい近いのに、静奈は縛られたように身体が動かない。


水の音だけが部屋に響き、無言の高柳がソッと静奈の髪に触れた。

思わずビクッと反応してしまう。



「橘…」



そう低く呟いてさらに身を寄せた。



その時。




ピンポーン、ピンポーン



< 115 / 348 >

この作品をシェア

pagetop