気がつけば愛でした



そしてフッと思った。高柳に彼女はいないのだろうか。

いや…いたらあんなことする訳ないか。

じゃぁなんでキスしたのだろうか。

再び疑問がわき上がったが、その思考を社長の言葉が遮った。



「なら公私混同しなくていいかな。」

「え?」

「契約を結びたい企業があってね。律を一緒に連れて行こうと思う。」

「高柳さんを…ですか?」



営業課が取ってくる個人的な契約ではなく、社長自ら出向いて契約をしたい会社ってことは、上手くいけば我が社の収益はかなり上がる。

そんな大事な場面に高柳を連れて行くといいだした。



「なぜです?」

「アイツは営業成績もいいし、うちのエースだ。その手腕は見たい。それに…」



社長はニヤッと笑う。



「いずれアイツは手元に置きたいからな。」

「社長、それって…」



ハッとした静奈に社長は笑いかける。

静奈は内心焦った。今の社長のセリフ。言外に、いずれ高柳を重役ポストに置きたいということだ。

自分の直属の部下にしたいと。



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