恋涙

覚えてない。



でも、私の大切な人だった。


秋人にはそれ以上何も聞かなかった。




何となく分かったから。



その先生とは私が記憶のない期間に出会ったということも。



きっと高校二年生の終わり頃から高校三年生にかけて出会った人なんだ。




先生って、病院の先生かな。



もしかして私、塾とか行ってたのかな。



それとも・・・高校の先生？





考えても考えても分からない。



“大切な人”の顔も、声も出てこない。




イライラする。



私は気がおかしくなって点滴の針を抜いて暴れた。



「分かんない！知らない！こんなもの知らない！」



持っていたお守りを秋人に投げた。




完璧な八当たり。