恋涙
秋人は一生懸命私を落ち着かせようとする。


ナースコールを押したのか、すぐに看護婦さんが来て私の腕をつかむ。



そのうち担当医も来て私は鎮静剤を打たれた。


やり場のない辛さが全身を走って、そのうち気が遠くなった。






その人以外にも、きっと私はたくさんの人を忘れてる。


たくさんの自分を忘れてる。




怖い。


気持ち悪い。




みんな過去の私を知ってるのに、私は過去の自分を知らない。




こんなことならいっそ死んじゃえば良かったんだ・・・。




どうして記憶の欠落に気づいちゃったんだろう?





私ってどういう人間だったかな、今までどういう人生を送ってきたのかな・・・。



平凡だった?





あ、あの暗闇での声はそういえば男の人の声だったな・・・。



私の大切な人ってあの声の主かな・・・。
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