恋涙


「おはよ・・」


珍しく久保さんの方が先に起きていた。

「おはよう。今日は早いのね。」


「たまには君の寝顔も見なくちゃ。」

彼は私の手を握って笑った。


「さ、支度をして早くでかけよう。」


最後のデートの日の朝・・・


その日は本当によく晴れてた。


朝ごはんを食べて、出かける準備をする。


いつもと変わらない休み。


私の支度が終わるのを彼は車の前でタバコを吸いながら待ってる。


これが最後なんて・・・


今までだってよく見てきた光景。


これからだってずっとあるはずだった光景。


支度が終わってベランダの窓の鍵を閉めるのに時間がかかった。


そこから見える彼の姿をずっと見ていたくて・・・


もう見られないと思うと、涙が出た。


その最後の姿をこの目にしっかり焼き付けておきたくても、涙が滲んで何度拭いても見ることができない。



いつかこうやってまた彼がタバコを吸って車の前で私を待っている姿を見ることができるのだろうか。


そう思うと、この先の未来が怖くなった。







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