恋涙

「お待たせ。」

彼は何も言わず、タバコの火を消して車に乗った。


「どうして初デートの場所を選んだの?」

車を発進させると、久保さんが私に質問をした。


「始まりの場所で最後を迎えたかったから。」


久保さんは何も答えなかった。


「久保さんは私のどこが良かったの?」


今度は私が質問をした。

その質問に久保さんは小さく笑った。


「いつも笑顔で凛としてるのに、でも実は結構天然なとこ。」


「なんかあんまり良いイメージがないんだけど。」


「ははは・・そういう君は俺のどこが良いと思ったの?」


「うーん・・・特にないかな。」


「えぇっ!?かなりショックだぞ、それ。」


「だって特別これが好き!っていうのがないんだもん。」


久保さんは唇を尖らせてドリンクホルダーに入っていたコーヒーを一口飲んだ。



「でもね、自分の人生に久保さんがいなかったらつまんないと思ったの。」


運転する彼の方を見て私が言うと、彼は私の方を見ずに笑みを浮かべた。


「でも久保さんはどうせ大谷さんから私の話しを聞いて私に声かけたんでしょ。」


「いや、そうでもないよ。」


「嘘。絶対そうだよ。」



車内ではそんな話をしてた。


出会った頃の二人、付き合ってからの二人・・・


今までいろんなことがあった。


そしてこれからもいろんなことがあるんだろうね。








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