「愛」 -レンタル彼氏-【完結】
少し、昔の話をしよう。


俺がレンタル彼氏を始めるきっかけ。
それは社長のスカウトだった。

俺が駅前を歩いていたら、真っ黒のサングラスをかけて、ぴしっとしたスーツを身に纏った男に声をかけられた。


「君、過去に闇があるね」

「は」


男の第一声がそれだった。
警戒心丸出しで、俺はそう返事をしたと思う。

だけど、男はそんな事気にする様子もなく、更に続けた。


「女に裏切られた、か」

「!!!!」

「図星だな」

「……あんた、何者?」

「ふはは、何者?そうか、そうだな」


男はおかしそうに笑うと、腕を組んで考え込む。


「君に夢を見させる者、かな」

「……は?」


意味がわからない。
何だ、この人危ないのか。

当時の俺はそうとしか思えなかった。


いや、今でもそう思うだろうよ。
いきなり、怪し過ぎるだろ。


「まあ、もう、君に決めたから」

「……何がですか」

「とりあえず、ここに連絡して」


そうやって、渡された名刺。
そこには『西園寺康弘』と目の前にいる男の名前が記されてあった。
左上には『代表取締役』の文字も。
< 12 / 302 >

この作品をシェア

pagetop