「愛」 -レンタル彼氏-【完結】
「………」

「あ、しなくても構わない。だけど、きっとまた会えるはずだ」


ぽかんとする俺を見て、男はニヤっとすると踵を返し去って行った。
現状が全く以てつかめない俺を置いて。


「………何、あのおっさん」


俺はぽつりと独白すると、その名刺をケツポケットに突っ込んだ。


それから暫く経った後。

西園寺康弘の言った言葉は現実となる。


その日。
俺は週五日は入っているバイトの日だった。

貧乏暇なしとはまさにこのことで、一人暮らしをしていた俺は毎日毎日バイトに明け暮れていた。
若い内しか働けないと思っていたから。
それに、こんな体…どうでもいいと思っていたのもあったかもしれない。


「あ」


原付に乗ろうと、鍵を差し込み顔を上げた時思わずそう言葉が出た。


目の前にいたのは、…あの男だ。
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