「愛」 -レンタル彼氏-【完結】
駅前に到着すると、俺は客に連絡をした。
すぐに笑顔で俺の乗っているタクシーまでやって来た彼女。

名前は早夜。
この仕事を始めて、二人目の客。

どこに住んでるのか、何をしてるのか。
何歳なのか、何も知らない。

だけど、必要ないと思った。


この仕事に、そんなモノ。

だって、俺には何もないのだから。



彼女の理想通りの彼氏を演じるだけ。

年齢も、血液型も。
何も関係ない。


彼女の理想であればいいだけ。


「千里、お待たせ。あ、はい。運転手さん、お金」


彼女は財布から一万を出すと、運転手に支払った。
俺はまだ車の免許を持っていない。

だから、こうしてタクシーで駅前まで行き、彼女に支払ってもらっている。



「さ、千里行こう」

タクシーから降りると、俺に腕を絡める早夜。


「早夜、暑い」

「うーそー、好きなくせに」


俺がそう言うと、早夜はわざとらしく頬を俺に擦り付ける。
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