棘姫

『でもさ――』

恭哉が明るい声を出す。


『こうやって毎日一緒にいるんだから、俺等…付き合ってるみたいじゃね?』

恭哉が優しく笑った。


心が深くえぐられたような感覚に陥った。




「――もう、からかわないでよ。私は……恭哉と付き合ってる気なんてないよ」

無理に笑って、冗談のように返した。


『…わかってるって!!
李羽は冗談通じない奴だな〜』

恭哉もどこか寂し気に笑っていた。


恭哉が何を言いたいか分かっていながら、平気で跳ね返す私は…本当に冷たい人間だと思う。




私には秘密がある。

誰にも言ってない、
家族しか知らない秘密。

もちろん恭哉だって知らない。




普通の女の子なら、誰にでもある当たり前のモノを私は持ってない。


2年前に――
失っちゃったんだ。


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