棘姫

歩いていると家の近くの公園に着いた。

休日だからか、家族連れがいつもより多い。


楽しそうに遊ぶ親子。



私には…
あんな風に自分の子供と遊べる日は永遠に来ない。

だって、
私は持ってないから――





『李羽?
急にどうしたんだよ』

恭哉に肩を叩かれハッとする。

いつの間にか私は足を止めていた。



『何見て…あ、子供かぁ』

恭哉も私の隣で子供を見つめる。
その横顔は優しい。


早く立ち去りたいのに、固定されたように動かせない足。



『俺さ、結婚して子供産まれたら、ああいう風に家族で遊びにきたいんだよな』

恭哉が優しく目を細めながら言った。

無意識に肩がビクリと反応する。




「そ、そうなんだ。
恭哉ならきっと…いいお父さんになるよ」

なんとか平然を装う。
声は少し震えていた。



『お、嬉しいこと言ってくれんじゃん。李羽は?なんかないの?理想の家族とかさ』

胸がキュウ…と締め付けられる。


悪気があって言ってるんじゃないのは分かってるの。

仕方ないよ…。
恭哉は知らないんだから。




「私は…特にない、かな」

『そうなのか?
女子の方がそういう夢持ってると思ってた。でも、李羽だっていい母親になれるよ』

照れたように言って、恭哉は私の頭を軽く撫でた。


嬉しかったけど…
心が痛かった。



「ありがとう」

そう言って笑った私。

ちゃんと
笑えていましたか?




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