棘姫

『…君は棘を持ってるね。
確かに君が売春や援交しようが俺には何も関係ない。止めようとも…思わないよ』

冷っとした風が頬を撫でる。

静かな夜の公園で、木の下に溜った落ち葉がカサカサと音を出した。


少年の言った最後の言葉が頭の中で繰り返される。

やっぱりこんな愚かなあたしは…誰にも相手にされないの?


分かりきっていたはずなのに、実際に耳にすると胸が痛む。




更に空気が冷たさを増したように感じた時、少年が小さく笑った。




『…っていうのは少し酷かな。
関係ないのは事実になってしまうけど、君が心の底では止めてくれる人が現れるのを願ってるなら…俺は全力で君を止めるよ』

最後の言葉はあたしを真っ直ぐに見て言ってくれた。

心が大きく震える。




『君は本心を押し殺して、自分の作った棘で自分を傷付けているように見えるんだ…』

少年が切ないくらいの声で告げた。


あたしは止めて欲しいの?

本当はそんな人を願ってる?


あたしは…自分の棘で自分を傷付けてるの?





「そんなの…"止めろ"って言われても、簡単にやめられる訳ないよ…」

あたしからは情けない程小さな声が出る。


堕ちるのは簡単だけど、
光を求め這上がるのは難しい。

楽であればあるほど、あたしを自分を傷付けていってるんだよ…。




『"自分一人の力ではどうしようもできない"
だからこそ、誰かに助けを求めるんじゃないの?赤の他人とかって強がらなくてもいいと思うけど』

あたしの心に直接語りかけるような優しい口調。


こいつも男なのに…
そこら辺の男とは全く別の生き物のように思えた。




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