棘姫
『じゃあ、どうしてその嫌いな男に対して売春してるのさ?』
返す言葉に詰まる。
そんなこと聞かれたのは初めてだった。
少しの間の後
「復讐したいからよ」
あたしは冷めた声でハッキリ言った。
あたしが援交するきっかけは、元彼が作ったようなもの。
だからこそ、
復讐したいんだ。
こんなのバカな自己満でしかないんだろうけど…
見付からないんだ。
これ以外には。
傷を消す方法が…。
実際には傷を消してたんじゃない。
傷に傷を重ね、ただ痛みを感じなくなっただけだったのにね。
『復讐?
どうして?』
少年が険しい表情に変わる。
「それこそ関係ないんじゃない?
あんたは善意であたしを助けてくれたけど、あたし達は赤の他人よ」
言い切ると同時に睨むような視線を送った。